木へのこだわり

トドマツ

井上工務所のある北見市留辺蘂町は古くから林業で栄えた町です。
留辺蘂町は森林面積49,646haを有し、全町面積の88%を森林が占める森の町で、古くから木材の町として発展してきました。木材加工を中心とする工業は、製材、集成材の生産を始め民芸品、家具などです。

そんな留辺蘂町で 私も子供の頃から、木と一緒に育ってきました。
私にとって木は空気と同じで、特に意識はしないけれどもあって当たり前のものです。
そして特に意識はしない中で、木に対する知識を自然と学んできました。

古より、木はとても身近な素材で、建築の主材料として用いられてきました。

しかしその一方で、木にはいろいろな特性があり、その特性をよく見極めて使用しなければ、その長所を活かしきれないどころか、逆に痛い目にあうこともあります。

先人たちは、その木の特性を理解しつつ、寺社を代表とされるさまざまな建造物を建築してきました。
私が思うには、先人たちは木の難しさに苦労し悩みつつも木への愛着を絶やさず、少しづつ木との距離を近づけていき、そして今の日本建築というものを育ててきたのだと思います。

私は、そんな先人たちの努力に敬意を払い、そして微力ながらもそんな先人たちの築いてきた知恵や技術を少しでも後人に伝えるため、木造建築そして日本古来から続く在来工法にこだわっていきたいと思います。

木の特長

木はその優れた特長ゆえ、古来から代表的な建築材料として使われてきました。
その特長について簡単に説明します。

◆身近な素材
木材

木は非常に身近な素材であり、日本人は古くから木と共に生活してきました。それゆえ、木の家には温かみや安心感といった数値にできない特別な親近感があります。

◆優れた加工性

木はご存じのとおり、ノコギリで切ったり、ノミやカンナで削ったりして思い思いの形に加工することが容易です。
そのため、機能性、意匠性や装飾性等様々な加工ができます。

◆優れた調湿性

人が生活するには最適な湿度があります。たとえば湿度が高すぎると不快感を感じたり、カビやダニなどの発生の原因となったりします。逆に湿度が低すぎると、風邪をひいたり体調を崩す原因となってしまいます。
木には調湿作用があり、湿度が高いときには空気中の水分を吸収します。一方湿度が低いときには、水分を放出し、室内を適度な湿度に調整してくれます。

◆暖かみのある素材

木はとても熱を伝えにくい素材です。
それは木の中には小さな空気(空気は熱をつたえにくい)の層があるからです。
たとえば、鉄を触ってください。ヒヤッとした経験があると思います。鉄は熱を伝えやすい(熱の伝導率が高い)ため、体の熱を素早く奪ってしまうのです。でも木をさわってもそんなに冷たくなく、場合によっては暖かく感じることもあると思います。それは木が熱を伝えにくい(熱の伝導率が低い)素材だからです。
”木のぬくもり”という言葉はそんな木の性質からできた言葉だと思いますが、とても的を得たよい表現ではないでしょうか?

◆やすらぐ香り

木の香りって落ち着きませんか?
花の香りも華やかさがありとても素敵なものですが、木の香りはとても控えめでいて、でも妙に落ち着く、安らぎの香りです。木の家だと落ち着くというのはそんな香りの効果もその一因だと言われています。

先人からの財産 在来工法

井上工務所では、日本伝統の木造建築技術である在来工法にこだわっています。
そのこだわりについてご説明します。

◆在来工法とは
在来工法

在来工法の構造は木質構造の種類の一つなので在来軸組工法とも言われていて、軸組みと床組みと小屋組みの三つから成り立っている構造が主体になっています。
それに加えて、その主体の構造部分を支えるような部分の基礎から出来ている作りのことをいいます。

日本古来の木造建築技術の根底が在来工法ですが、近年、耐震構造なども考慮し、ツーバイフォー工法の技術・長所なども取り入れ年々進化しています。

◆在来工法のメリット

まず在来工法の構造上のメリットとしては加工をするのがとても簡単であるというメリットがあります。
在来工法のほうが大きな開口部を設けることが出来る、構成の自由度が高いといった利点があります。

加工が簡単にできるということはそれはいいかえれば将来的に増築をするという場合や、改築をするという場合でも簡単に行うことができるということにつながります。

◆在来工法のデメリット

在来工法の構造上のデメリットのひとつはツーバイフォー工法等に比べ、日数がかかってしまうということがあげられます。他の工法の構造に比べると基礎から三つの部分に分かれているので、しっかりした作りではありますがそれが逆に日数がかかるというデメリットにもなっています。
しかしながら、集成材などの工場生産された規格化材料を用いることで、作業の合理化が進んでおり、作業日数というデメリットも改善されてきています。

在来工法は、大工の腕に頼るところが多く、熟練した大工と経験の浅い大工では住宅の完成精度に差がつきやすい工法でもあります。逆に言えば、腕を上げるほどより優れた住宅が建てられるという、昔ながらの”職人気質”の大工にとって、非常にやりがいのある工法であるとも言えます。